鉄だって、もともとは
大地の資源として産まれたものなんですよ
──最新シングル『AIRAの大地』が発売になりました。この歌は、"近代製鉄発祥150周年記念事業イメージソング"としても起用中。しかも石井さんは、イメージキャラクターの"AIRA"もデザインしています。
石井竜也さん このAIRA、鉄=IRONの名前から導かれた名前なんです。もともとは、"近代製鉄発祥150周年記念事業イメージソング"の依頼を受け、制作。あまりにも良い曲が出来たので、「ぜひCD化してください」 とお願いしたところ、今の形へ結びついたわけですが。その際、以前から懇意にしていただいてるPRODUCTION.IGというアニメ制作会社から、「アニメも仕様したPVを制作する」 というお話をいただいたこともあり、「だったらみずからシンボル・キャラクターも作ってしまおう」 と思ったことが、そもそもの始まりでした。
──AIRAは、どんな経緯から産まれたキャラクターだったんですか??
石井竜也さん 今や、何事もコンピューターに依存してゆくようなデジタルの世界になっている。だからこそ、その間逆にある 「ネイティブなキャラクターを作りたい」 というのが、そもそもの発想の始まりでした。しかも作る以上は、「どこの国の子供なんだろう?」 「どこの国の衣装を着ているんだろう!?」 など、そういう属性の見えにくいキャラクターを作りたかったんです。
──キャラクターを女の子にしたのにも、いろんな理由があるのでしょうか?
石井竜也さん "鉄"という言葉だけを聴くと、アーマーやロボットのよう固いイメージを抱きがちじゃないですか。だけど本来鉄だって、水や空気と同じよう、地球からの恩恵を受け誕生した"地球の資源"なんですよ。今回、「"近代製鉄発祥150周年記念事業イメージソング"を」 という依頼を受けましたけど。じつは"人々の生活と鉄が身近に触れ合ってく環境"というのは、もう1200年くらい前から日常的にあったことなんです。それくらい、鉄は人とともに生き続けてきた存在なんですよ。その鉄から、なぜ女の子のキャラクターが…と言うと、鉄って最初はドロドロとしてた液体じゃないですか。じつはその鉄の元を作っている、よく工場の中で見受けられる"蹈鞴製鉄"という大きな坪が、女性の子宮にも見えてきた。その子宮のような蹈鞴製鉄からドロッと流れた液体が固まり、それが次々製品の一部として市場へ流れていく。つまり、もともとは大きな容器から生み出されたよう、鉄もまた女性の器の中から産まれたようなイメージを僕は抱いたんですね。実際に調理器具など、女性のほうが、生活の中、身近に鉄と接していることも多い。そこから"鉄=女の子"というイメージに結びつき、女の子のキャラクターを、先の説明を加えながらプレゼンテーションしていったんです。そうしたら鉄鋼業界の人たちも納得してくれ、「それでいこう」 となったわけなんですよ。
──その経緯には、まさに納得でした。
石井竜也さん 鉄だって、もともとは大地の資源として産まれたものなんですよ。『AIRAの大地』というタイトルもまた、「鉄も大切な大地から産まれた資源なんだよ」 というメッセージとして伝えていったものですから。
こういう再利用の精神って、
日本に古くから根付いている 「もったいない」 精神に
通じるものでもあるんですよね。
──鉄って、物質文明の象徴のように思われてますけど。けっして、そんなことはないんですよね。
石井竜也さん 確かに過去には鉄も、(戦うための道具として) 悲しい使い方をされた時代もありました。だけど使い方によっては、僕たちの生活を豊かにしてくれる、欠かせない材料の一つでもある。これは、ぜひ書いて欲しいことなんですけど。鉄鋼業界と言うと、"反エコロジー"と考える人がいますが。じつは日本の鉄鋼業界こそ、エコロジーのことを真剣に考え、そのために莫大な金額を投資しているんですよ。それこそ、精製するうえで産まれた熱を大空へ放熱してしまうのではなく。釜から産まれた熱を、また釜に戻しながらエネルギーに変えてゆく"循環型"なシステムを作りあげ、それを実践している業界でもある。その技術を習得しに、発展途上国の製鉄業界の人たちが、次々日本へ学びに来ている事実もありますからね。だけど日本の製鉄業界って、そういう事実を高らかに言うことが本当に少ない業界なんですよ。だったら僕が、変わりに言ってあげようかなと思ってね。
──日本の製鉄業界が、そんな試みを実践してるなんて…正直、初めて知りました。
石井竜也さん こういう再利用の精神って、日本に古くから根付いている 「もったいない」 精神に通じるものでもあるんですよね。"余ったものを捨てることなく有効的に活用する"。そういう意識を、僕らもまた小さい頃から教えられてきた。その意識を日本人が持っているからこそ、そういった試みも産まれてきたんだと思います。
──話を聴いてて、納得です。
石井竜也さん じつは『AIRAの大地』の歌詞に僕は、その"もったいない精神"を 「見つけたものは与えてくれたもの」 と綴っている。つまり"大地からの恵みの恩恵を、僕等はけっして忘れてはいけない"という意識に変え、伝えているんです。表層的に歌詞を捉えるぶんには、そこまでの感覚は伝わりにくいかも知れないですけど。この『AIRAの大地』の芯となる部分には、そういう意識があるんだということを、まずは知っておいて欲しいなと思いますよね。
これからの未来を支える子供たちに向けたメッセージだって、
やっぱし歌っていくべきなんだと思うんです。
それが、今の僕の使命と言いますか…。
──C/Wに収録した『虹の輪』にも、同じよう"大地からの恵み"的な意識を感じました。
石井竜也さん じつはこの歌、アニメ専門チャンネル 「アニマックス」 が行った、優れたシナリオライターを選出するためのコンペティション 「アニマックス大賞」。そのコンペで大賞を獲得した、PRODUCTION.IGが制作したアニメ 「ゆめだまや奇談」 のテーマ曲として作りあげた楽曲でした。当時は、コンペ用に上映され、その放送内で流れるだけで使命感を果たしてしまう楽曲になっていたんですけど。あまりにもいい曲だったので、「どっかのタイミングで形にしたい」 と思っていたんですね。だけど、もともとアニメ用に制作したわかりやすい楽曲だったよう、アルバムへ収録するにも何処か異彩を放っていたんです。だけど今回、『AIRAの大地』のよう子供から大人までしっかり伝わる、わかりやすい楽曲がCDとして形になることから、「ここへ一緒に収録するのが最適」 と思い、提示したら、みごとC/Wの歌に選ばれたというわけなんです」
──『AIRAの大地』『虹の輪』とも、深いメッセージ性を抱いた楽曲たちになりました。
石井竜也さん もともと異なる接点から産まれた2曲とはいえ、来年50歳を迎える今、僕も 「社会的なメッセージを伝えていくのは、ミュージシャンとして大切なことだし。20代の頃には伝えきれなかったことを、今なら明瞭な想いとして伝えられる」 という気持ちのもと、作りあげた楽曲たちでしたからね。
──『AIRAの大地』『虹の輪』とも、幅広い年代層へ届けていけるに相応しい内容の詞になった印象も受けました。
石井竜也さん もちろん、これまでのよう米米CLUBを通し表現してきた 「おめぇとヤリてぇよ」 みたいな楽曲も唄い続けますけど (笑)。同時に、これからの未来を支える子供たちに向けたメッセージだって、やっぱし歌っていくべきなんだと思うんです。それが、今の僕の使命と言いますか…。
──そこには、米米CLUBと石井竜也との違いもあるわけですよね。
石井竜也さん 違いはあります。ストレートに熱くメッセージを伝えたいときには、石井竜也名義での発注が多いですし。柔らかい表現だったり、多少ふざけた感覚も入れて味わいたいときは、米米CLUBとして発注が来るよう、そこは自然と分かれていきますよね。
──でも石井さんとすれば…
石井竜也さん その2つのベクトルがあるから、いいんですよ。
その明確な違いがあるからこそ、米米CLUBが復活した意味があるわけなんで。
──最後に、ひと言お願いしても良いですか?
石井竜也さん この『AIRAの大地』に関しては、ある程度のメッセージ性もあるとはいえ、子供でもすぐに聴ける軽快な楽曲でもあるよう、すごく"ファミリー的な意識"で楽しめる楽曲になったと思います。ましてAIRAちゃんのようなキャラクターも一緒に付いてくるよう、本当に幅広い世代の人たちに受け止めてもらえつつ。子供でもわかりやすく書いた歌詞の中にも、じつはとても深い想いやメッセージを含ませているように、その年代ごとの経験で捉え方も変わってゆく楽曲になったと思います。ぜひ、幅広い世代層に想いが届いたら嬉しいですね。